kintone を解約する前に、取り出しておくべきもの
2026年10月9日
他のサービスへ移る、事業をたたむ、使う部署が無くなった。 理由が何であれ、解約は日付が先に決まっている仕事です。 そして kintone のデータは、その日付を過ぎると戻せません。 この記事は「何がいつ消えるのか」と「標準の書き出しでは出てこないものは何か」を、出典つきで並べたものです。
まず、いつ消えるのか
公式の記載はこうです。
- 解約しただけの場合
- 解約日の翌日から30日後に、登録データが消去されます。 30日以内に再契約すれば、データを復活して利用できるとされています。 つまり解約直後に即死するわけではありません。
- サイボウズドットコム ストアを退会した場合
- 30日間の保存期間を待たず、削除した時点で登録データが消去されます。 解約と退会は別の操作です。ここを取り違えると、猶予が丸ごと消えます。
- バックアップ側
- サービス契約終了翌日から30日後に入力データ・ユーザー情報・監査ログが消去され、 バックアップデータは各データの消去から2週間程度で完全に消去されます。 「サイボウズ側に控えが残っているから後で頼めばいい」は、ある時点から成立しません。
- 複数サービスのうち一部だけ解約した場合
- 解約したサービスの入力データのみが消去されます。
- 販売店(パートナー)経由で契約している場合
- ストアや cybozu.com 共通管理からは解約手続きができません。販売店に相談する必要があります。 自社の都合だけでは日付を動かせないので、逆算の余裕はさらに短くなります。
出典: cybozu.comを解約する / サイボウズドットコム ストアを解約する / インフラ運用(2026年10月時点)
標準の書き出しで取れるもの
kintone の標準機能とクライアントツールで、ここまでは取れます。ここは問題ではありません。
- 各アプリのレコードを CSV で書き出す
- 添付ファイルを
cli-kintoneで--attachments-dirを指定して落とす - アプリのテンプレートを ZIP で書き出す(手動)
ここからが、標準では出てこないもの
1. レコードのコメント
CSV の書き出しにコメント欄は含まれません。
cli-kintone の record export にもコメントのオプションはありません
(指定できるのは --app / --attachments-dir / --condition /
--order-by / --fields / --encoding で、コメントに関するものは無い)。
取るには REST API の /k/v1/record/comments.json を
アプリIDとレコードIDを1件ずつ指定して叩くしかありません。
1リクエストで取れるのは最大10件です。
承認の経緯や差し戻しの理由をコメントに書いてきた現場では、
これを取らずに解約すると、判断の理由だけが消えます。
レコードは CSV に残っているのに、なぜそう決まったかが残らない。
コメントが更新日時にも revision にも載らない話は 別記事に書きました。
2. アプリの設定
フォームの項目定義、一覧の条件、プロセス管理の状態と遷移、通知条件、 計算式、ルックアップやテーブルの関連付け。 テンプレートの ZIP にはおおむね含まれますが、アプリごとに人が手で押す必要があります。 100アプリあれば100回です。解約日の前日に気づくと、まず終わりません。
3. アクセス権
アプリ・レコード・フィールドの3階層の権限と、それが参照している組織やグループの構成。 「誰が何を見られたか」は、監査で後から聞かれる側の情報です。 解約後に「あの時点で誰が参照できたか」を証明する手段は、取っておかなければありません。
4. 削除済みのレコードとコメント
これは取れません。 kintone の REST API に、削除済みのレコードやコメントを列挙する手段が無いためです。 解約の時点で生きているものしか持ち出せない、というのが仕様上の天井です。 誤って消したものを解約後に探すことはできません。
5. ユーザーと組織の名簿
レコードの作成者・更新者・作業者はユーザーコードで入っています。 名簿を一緒に持ち出さないと、書き出した CSV が後で読めなくなります。 「誰が入力したか」が記号のままになるからです。
逆算すると、いつ着手すべきか
消去は解約日の翌日から30日後。ただし作業できるのは解約日までです。 解約後はログインできないので、30日はあくまで「再契約すれば戻せる」期間であって、 取り出し作業に使える期間ではありません。
解約日 ← ここが実作業の締め切り
レコードと添付の書き出し : アプリ数とデータ量による
コメントの取得 : レコード1件につき1リクエスト以上
1万件のアプリなら API の1日上限(1アプリ1万)に当たる
アプリ設定のZIP : アプリ数ぶん、手作業
アクセス権と名簿の控え : 1回
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レコードが多いほど、コメントの取得で日をまたぐレコード1万件のアプリは、コメントまで取ると1日では終わりません。 API の1日あたりの上限が1アプリ1万リクエストで、コメントは1レコードにつき1リクエスト以上かかるためです。 3万件なら3日分の枠を使い切ります。 この制約の詳細は別記事に書きました。
つまり解約日の1〜2週間前に着手しても、規模によっては間に合いません。 見積もりだけでも先に取ってください。自分でやる場合でも、アプリ数とレコード総数を数えるのが最初の一手です。
自分でやる場合の順番
- 数える。 アプリ数、アプリごとのレコード件数、添付の総容量、コメントが溜まっているアプリ
- ユーザー・組織・グループの名簿を先に取る。 後で CSV を読むために要る
- レコードと添付を書き出す。
cli-kintoneのrecord exportと--attachments-dir - アプリ設定を ZIP で保存する。 アプリごとに手作業
- コメントを取る。 ここが一番時間を食う。API の日次上限に当たるので分割する
- アクセス権の設定を控える。 3階層ぶん
- 取れなかったものを文書に残す。 削除済みレコードなど、仕様上取れないものがあることを記録しておく
最後の1つを省かないでください。 「全部取った」と言えない範囲があることを、取った時点で書いておく。 後から監査や訴訟で聞かれたときに、何が無いのかを説明できる状態にしておくためです。
代わりにやることもできます
kintone 全量退避パック ¥49,800(税別・1テナント1回)
読み取り専用の API のみを使い、アプリ・レコード・添付ファイル・コメント・ アプリ設定・アクセス権・ユーザーと組織の名簿をまとめて取り出し、 そのままお渡しします。月額の契約にはなりません。1回で終わりです。
- 書き込みは一切行いません。消したり変えたりしません
- APIの日次上限を自分で超えないよう、1アプリあたりの消費を抑えて取得します
- 取得できなかったものは、理由つきで報告書に書きます。 削除済みレコードのように仕様上取れないものは、取れないと書きます
- お渡し後、当社の環境からはデータを削除します。控えは持ちません
取得できなかったデータがあった場合も、返金はいたしません。 権限やご契約のコースによって取得できない範囲があり、 何が取得できなかったかは報告書に理由つきで記載します。 詳しくは特定商取引法に基づく表記と利用規約をご覧ください。
まず規模だけ知りたい場合は、無料の実測をご利用ください。 アプリ数・レコード総数・添付の総容量・コメントの蓄積状況をお返しします。所要10分ほどで、書き込みは行いません。
解約しない場合でも、同じ話です
ここまで挙げたもの(コメント・アプリ設定・アクセス権・名簿)は、 解約しなくても、消えたときに kintone 側には何も残りません。 解約は「いつ消えるか」が日付で見えているだけで、 見えていないだけの消失は、使い続けている間もずっと起きています。 解約の予定がなくても、一度まるごと取り出しておくことには意味があります(全量退避パック)。
データの保存期間・消去のタイミング・解約と退会の違いは cybozu.com Store ヘルプおよび サイボウズのインフラ運用の記載に基づいています(2026年10月時点)。 仕様は変更される可能性があります。 記載内容に誤りを見つけた場合は hello@tokimodoshi.com までご連絡ください。訂正します。 関連記事: 削除しても痕跡が残らない件 / 復元しても元どおりにならない件 / APIリクエスト枠の話 / 他社との規模別比較